注意 

ここは鬼太郎受けのやおい小説のページです。
間違って開いた方、18歳未満の方、
鬼太郎受けに嫌悪を抱く方は観ないでお戻り下さい。

基本的に松×高ですが、この話では二人が体を売っている設定
でしたので、別の男達を相手にするシーンもあります。
そういうのが不快な方は読まないで下さい。

今回は一刻堂→松っぽいです。



















































松×高パラレル小説
春売り少年・高と松』



第九章「いたずら」


ある日、松が用事で家を2、3日留守にすることになった。
高も一緒に付いて行きたがったが、家で待つように言われた。
松は人間界で問題を起こしている妖怪を静めに行くらしいので、
まだ妖力をうまくコントロールできない高を連れて行くことはできないと言うのだ。
それに、人間界にはあの店で働いていたころの高を知るふとどきな者もいる。
当分高をそんな所へは行かせたくないという気持ちもあった。
しかし、高は早く松の手伝いができるようになりたいと思っている。

松にくれぐれも人間界や、遠くの森に行かぬように念を押された。

「いいかい?何があっても決してここを出てはいけないよ?
僕がここに帰るまで大人しく待っているんだ。」

「はい、わかりました。松兄さんも気をつけて。」

目玉の親父と一緒に家に残された高は、父とゆっくり話をしていた。

「父さんと兄さんはずっとここで暮らしていたんですか?」

「ああ、そうじゃよ。松が小さいころは妖怪仲間の砂かけばばあが
母親代わりになってくれてのう。」

「そうですか。…僕も、子供のいない夫婦に育てられるはずだったのですが…
すぐに僕が言葉を話したりして、普通の人間とは違うとばれてしまったので…」

「…ほんにすまんのう…おまえも始めからここで一緒に暮らすはずじゃったのに…」

目玉が涙で潤み始めた。高はあわてた。

「父さん!いいんですよ!!…僕…自分のことをよくわかっていなかったんですが、
一つだけハッキリわかっていたことがあるんです。」

「ん?」

「名前です。高鬼という名前だけは生まれる前から知っていて、
それを人間が僕の名前を考えている時に話したんです。」

「そうじゃな。おまえが高鬼と名乗っていたのがとても嬉しかった。
きっとお腹の中にいたころに聞いておったんじゃろう。
男の子が生まれたら高鬼か松鬼にしようとおまえの母とワシは話しておったからのう。
そういえば、松鬼が生まれた時もすぐに『まちゅ』と言っておったわい。
自分達の名前をお腹の中でそれぞれもう決めておったんじゃな。」

「僕は店にいる時、本心を隠して流されて生きていました…。
そんな僕を楽に消してあげようというお客もいました。」

「そ、それは…まさか…」

「陰陽師の言霊使いの人でした。いっそその方がいいと思うような生活でしたが、
僕は心のどこかで感じていたんです。僕の生きる場所…家族があることを…」

「高鬼…うっ…うっ…辛かったじゃろうが、
ワシはおまえが生きていてくれて本当に良かったと思っておる…」

目玉の親父はまた涙を流した。

「僕もです、父さん。今こうしてここにいるんですから…」

地獄の日々を逃れ、ほのぼのとした空間の中、高は小さな父と微笑み合った。


次の日、お昼すぎまでゆっくり寝ていた高が目を覚ました。

「あ…そうか…松兄さんはいないんだっけ…」

いつも側にいる愛しい兄がいないのは寂しい。

「早く帰ってくればいいなあ…」


しかし…松は一週間たっても戻ってこなかった。

「父さん…松兄さんに何かあったのでしょうか?」

「うーむ…松のことじゃ。心配はないと思うが…」

「何だか嫌な胸騒ぎがするんです…」


1週間前…松は、ある村に向った。
人間に悪さをしている妖怪を説得しに行ったのだ。
2日目にその妖怪に出会い、話をしたが、
聞いてもらえず逃げられた。
そして3日目に再びその妖怪に会ったが、
その時側に、もう一人男がいた。
松が知っている男だ。あの店に客として来ていた、
黒い着物を着た男。

「一刻堂…さん…?」

「おお、松くん!久しぶりだね。」

「どうして、ここに…?」

あまり会いたくない相手だ。
それに、高にも会わせたくない。

「妖怪を退治してくれとここの住人に頼まれてね。」

「退治?そんな…今、僕が説得中です!」

「しかし、この妖怪はそう簡単に言うことを聞くとは思えん。
私に任せなさい。すでにもう、この妖怪は今、身動きができなくなっている。私の術でね。」

「ちょっと…待ってください!」

「この妖怪は人々に迷惑ばかりかける、いらない存在だ。消した方が良い。」

一刻堂は呪文のような言葉を唱えた。
すると妖怪は、跡形もなく消えてしまった。
まるで最初から何もいなかったかのように…。

「…なんてことを…」

「ほら、簡単だろう?」

「身動きができないなら、もう悪さもできない…!
消す必要はないでしょう!?」

松は怒った。一刻堂をキッと睨んで言った。

「妖怪なんて物は元々この世にあってはならない存在だ。」

「…僕も妖怪です…!どんな生き物でも、存在する理由はあります!!」

「ふむ…確かに、君や高くんは存在する理由があったね。
店で求められていた。」

少し意地悪く言った。
ますます松の怒りは燃え上がった。
その形相を見て、一刻堂は喜んでいるようだった。

「君が感情を表に出すのは珍しい。わずかな表現を見つけるのも楽しかったが、大きく乱れる君も見てみたくなったよ。」

「ふざけるな!!」

松が一歩一刻堂の方に近づいたそのとたん、地面に五亡星の光が現れた。

「!?」

松は身動きがとれなくなった。

「君はいったい何者なんだね?」

一刻堂が松にそう聞いた。

「僕…僕は…」

どうしたことか、松は自分のことが急にわからなくなった。

「自分の名前もわからないのかね?
では私が教えてあげよう。君の名は…太郎だ。」

「た…ろう…?」

「君は孤児で、今は私の弟子だ。
共に暮らしている。」

「………」

[
「さあ、帰るぞ。」

スタスタと歩いて行く一刻堂。松はその後ろ姿を追って行くしかなかった。
一刻堂の屋敷に付き、五亡星の印のある門をくぐる。
奥にある離れの部屋に向った。
そこが彼の私室らしい。

松はそこで3日過ごした。
食事などの世話は昼間に来る巫女さんのような年配の女性達がやってくれている。
松はやはり違和感を感じていた。
自分がここにこうして暮らしていたなんて思えなかった。
落着かない。早く行かなくては…。でもどこに?

一刻堂は松が術にかかりきっていないことに気付いていた。

そして、次の日の夜…
後は寝るだけになった時間に、一刻堂は松に自分の寝室に来るように言った。
そこで彼はとんでもないことを松に言う。

「言い忘れていたのだが、私と君は恋人同士でもあるのだ。」

「えっ…?」

「体の関係がある…。覚えがあるだろう?」

「……」

確かに…かすかにその記憶はあった。

「おいで…」

布団の上で手を差し出す黒衣の男。
とまどいながらもゆっくり足がそちらに向いてしまう松。
だが、心の奥底で誰かが叫んでいるような気がした。
この男に近づいてはいけないと…。
男の手が届く所に来てしまった。
松は手を捕まれ、引っ張られてよろつき、布団の上で組み敷かれてしまった。
男は松の顔に近づき、唇を重ねようとした。
その瞬間、松は顔をそむけた。
男はもう一度口付けをしようとしたが、またよけられてしまう。

「どうした?太郎。」

「僕は…太郎じゃない…!こんな…嫌だ…!嫌だ!嫌だ!!」

松は必死に一刻堂の胸を押して逃れようともがく。


「怖がるな…。私は君を愛している…」

その言葉にちょっと驚くが、松は愛している相手が
自分には他にいることをハッキリと思い出した。

「僕は…あなたを愛していない…!僕が愛しているのは…」

フッと少年の笑顔が思い浮かんだ。

「タカ…高だ…!僕は高だけを愛している!!」

松はすべてを思い出した。

「僕の名前は松…松鬼だ…!!」

「フッ…さすがだね…。自力で思い出したか…。
しかし、君の妖力は役に立たないよ。」

「くっ…」

松が攻撃をしようとしても思い通りにならなかった。

「この部屋には特殊な結界が張ってあってね。
妖怪は妖力を使えないし、私以外は誰もこの部屋から出入りできない。
いや…一人だけ、入ることはできるが…」

「……?」

「ちょうどそのもう一人が来たようだ…」

一刻堂が外の気配を伺う。すると、聞き覚えのある声が聞こえた。

「松兄さん!!」

「高!!」

高はカラス達に聞いてこの居場所をつきとめたのだった。
そして、かすかに感じる松の妖気をたどってこの部屋の前に来たのだ。

「松兄さん!ここにいるんですか!?」

すぐそこに高がいる。襖の向こう側だ。

「高!!来るな!ここに入ったらダメだ!!」

必死に叫ぶが高は松が心配で、襖を開けて部屋に入ってしまった。

「松兄さん!!」

高が見た光景は一瞬息が止まるほどショックだった。
松が布団の上で男にはがいじめにされて横たわっているのだから。
高に見る見る怒りがこみ上げてきた。。

「松兄さんを放せ!!」

この部屋では妖気は放てないはずだが、
殺気のようなものがすさまじいほどに感じる。

「やはり来たね。待っていたよ、高くん。
君ともまた会ってみたかったのだ。」

一刻堂は体を起こし、微笑んで言った。

「僕達に…何の用ですか…?」

高は男を睨んだまま聞いた。
すると、男はいけしゃあしゃあと答えた。

「できれば、もう一度二人を抱いてみたかったのだよ。」

『ふざけるなっ!!』

今度は高と松、二人で声をそろえて怒鳴った。

「が…そんなことをすれば、私の命が危ういようなので…やめた!」

「あなたはいったい…」

高が聞いた。
弄ばれているようで腹が立つ。

「君達には忌まわしい思い出でしかないだろうが…
私達は現に体を重ねた仲なのだ。
少なからず興味を持っても不自然ではないだろう?」

つまりこの男は二人に好意を持っていると言いたいらしい。

「君達二人が想い合っているのも知っている。
私は祝福するよ。二人の今後の永遠の愛をね…」

いったい何なのだ、この男は…?
二人はあきれ果てた。

「いったいあなたの本当の目的は何だったのですか?」

松も改めて聞いた。

「すまない。ただ本当にもう一度二人に会いたかっただけだ。
そして最後にちょっと驚かせてみたかったのだよ…」

殴ってやろうとも思ったが、もう二度とかかわりたくないので
さっさと退散することにした。

二人が門を出て帰ろうとした時、一刻堂は言った。

「ほんのひとときだが、松くんと共に暮らせて楽しかったよ…」

少し寂しげな微笑を浮かべて、一刻堂は二人を見送った。
松は何も言わず、高と一緒に本当の家に向った。

「…とにかく…松兄さんが無事で良かったですよ…」

「あれほど家で待ってるように言ったのに…」

「だって…松兄さんにもしものことがあったら…」

「ボクだって…同じだから…」

二人は固く手を握り合った。

「…松兄さん…あの人のこと…どう想います?」

「ん?妙な人間だと思うよ。」

「…松兄さんのこと…好きみたいでしたね…」

「……高、それって…ヤキモチ?」

「…っ、だって…」

高は松があの男に押し倒されていたあの光景を思い返す。

松はフッと笑った。

「嬉しいな…高がヤキモチ焼いてくれるなんて…
今までは僕ばかり心配でヤキモキしてたのに…」

「僕だって、松兄さんのこと、好きなんですから!当たり前じゃないですか!」

ムキになる高に、松はグイッと肩を引き寄せた。

「あっ…」

フラッとよろけて松に抱きつく形になった高。
松は高を抱きしめた。

「あ…松兄さん…こんな所で…」

人は見当たらないけれど、ここはまだ人間界の林。
高はキョロキョロ辺りを見回して顔を赤くする。

「僕は君だけ…君も僕だけ…」

「うん…」

「愛してる…」

松は高に口付けた。

その姿を離れた所からそっと見つめていた男がいた。
男は微笑んで今度こそ本当に二人を見送ったのだ。








つづく







裏トップにもどる