注意 

ここは鬼太郎受けのやおい小説のページです。
間違って開いた方、18歳未満の方、
鬼太郎受けに嫌悪を抱く方は観ないでお戻り下さい。

基本的に松×高ですが、この話では二人が体を売っている設定
ですので、別の男達を相手にするシーンもあります。
そういうのが不快な方は読まないで下さい。

今回はエッチシーンはないです。


















































松×高パラレル小説
春売り少年・高と松』



第七章「生い立ち」

最高に幸せな情事の後、眠りからさめた高はぼんやり考えていた。
もう松以外の者に抱かれるのは嫌だと。
一秒でも早くここから逃げ出したい。
でも、そんなことができるのだろうか?
不安を抱く高の横で寝ていた松が身じろいだ。

「ん…」

「あ、松さん…目が覚めました?」

「うん…」

松は高を抱き寄せた。
軽く口付ける。

「松さん…これから僕たち…どうしましょう…?」

悲しげにささやく高に、松はすんなりと言い切った。

「帰るのさ。僕たちの故郷に…!」

「えっ!?」

「僕がずっと探していたのは君だったんだから。」

「松さんが僕を…?どうして…」

「僕は君の双子の兄なんだ。」

「ええっ!?僕と松さんが双子?」

「急にそんな話をしても信じてもらえないと思ったから、
君をさらってしまいたいのをがまんして
時間をかけて君の心を開いていくように努力したんだ。
僕自身、君の境遇を理解したかったしね。」

「そ…そんな…そのために…松…兄さんまで…こんな…仕事を…」

「君と違って自由に生きてきたことが申し訳なくて、
少しでも君の気持ちがわかるようにと思って僕が勝手にしたことだよ。気にしないで。」

「うう…っ…バカ…ですよ…っ…そんな…」

「うん…ごめんね…ずいぶん遅くなって…。
迎えに来たよ…高…!」

手をさしのべる松。

そうだ。僕はずっとこの人を待っていたんだ…!

「兄さ…」

松に抱きつき、声を上げて泣く高。
これは今までたくさん流してきた辛い涙とは違う。
嬉しくて切なくて、どうしょうもない気持ちの涙だった。

「僕たち幽霊族は滅んでなんかいない。
僕と君…それに、お父さんもいるんだよ。」

「えっ!?お父さんは生きてるんですか!?」

「うん…目玉になっちゃったけどね。」

「目玉…?」

「お母さんもお父さんも僕たちが生まれる前に病気で死んだんだけど、
お父さんは目玉の姿で生き返ったんだ。
それはまだ母さんの中で生きてる息子がいることを感じていたからだと思う。
僕たちは死んだお母さんのお墓の中から生まれてきたんだ。」

父さんが生きている…!目玉だけだけど、僕にお父さんがいるなんて…

孤独だった高はとても嬉しかった。

「僕が先に出て、その時お父さんが来て妖怪の世界に連れて行ってくれたんだ。
だけど、お父さんはもう一人君がいたことを知らなかった。
そして後から出てきた君は、人間に拾われてしまったんだ。
20年ほどたって、お父さんが霊界のお母さんに会える機会ができた時、
初めて君の存在を知らされた。
君、生まれた時自分の名前だけは知ってただろう?
あれはお母さんがつけて、お腹の中の僕たちに伝えていたんだよ。」

妖怪の世界?そこが僕たちの故郷?
霊界のお母さんに会った?会えるの?
妖怪って…すごい…

何も知らなかった高はびっくりした。

「それから父さんはいつも君のことを泣きながら話しているよ…
まさか、人間が君をこんな所に売るなんて…考えたくもなかった…」

ああ…僕は汚れてしまった…。
こんな息子ではお父さんもがっかりするんじゃないだろうか…?

「僕…僕なんか…本当に…帰ってもいいんですか?」

「何を言ってるんだい?父さんは君に会いたくてしかたがないんだよ。
何も心配しないで、僕と一緒に帰るんだ。」

松は高の手を握り、中庭に出た。

「いったいどうやって…?」

高が不思議に思っていると、空に白い布が浮かんでいた。
それがこちらに飛んでくる。

「お迎えにあがりましたでごわす!」

布が言葉を話した。

「一反木綿、僕の友達だよ。さあ、乗って。」

「え?」

高は松に手をひかれて一緒に布に乗る。

「よし!帰るぞ!!」

布きれは二人を乗せたまま空に向って飛び上がった。
高が長年暮らした忌々しい建物から、どんどん離れていく。
それを見下ろしている高は夢を見ているような気分だった。

もう僕は自由なんだ…!

感激している高に、一つだけ心残りがあった。
ただのお客ではない、あの蒼という旅人のことだ。
自分がいなくなって、心配させてしまうかもしれない…。

そう思いながら町の上空を飛んでいた高の目に、
その人が見えた。土手の道を歩いていたのだ。

「あっ!蒼さん!!」

叫ぶと蒼は見上げて高を見つけた。

「高か!?」

「蒼さん!僕、兄が…本当の兄がいたんです!!
故郷に帰れるんです!!」

「高…そうか…」

蒼は寂しげな笑顔を浮かべた。

「お世話になりました!蒼さん!!」

手をふる高。

「元気でな!高!!」

蒼も手をふる。
ちょっと涙ぐむ高。
彼の姿が見えなくなったころ、松はボソリと高に聞いた。

「…未練があるの…?」

「え?」

「戻りたい?」

「いえっ!」



高は松にしがみついた。

「ただ…あの人は…特別だったので…最後に会えて良かったです…」

「そう…」

心なしか松の口調が冷たかった。







つづく







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