5期キタネコショート小説 その2







「ランランラララララーン」
ご機嫌な様子でいつものように鬼太郎の家に行くネコ娘。

「鬼太郎―!!」
ネコ娘は笑顔で鬼太郎の家に入った。

するとそこには、砂かけばばぁや子泣きじじぃもいて、
「シーッ!!」と二人に言われた。

「どうしたの?」

「鬼太郎が寝ているんじゃ。静かにしておくれ。」
おばばに言われて不思議に思うネコ娘。

「え?鬼太郎が寝ているのはいつものことじゃない。
もう起きてもいい時間だし…」


しかしネコ娘は、鬼太郎が寝ている姿を見ていつもの鬼太郎でないことに気付く。

「き…鬼太郎…?」
すやすや寝ている鬼太郎は、あきらかに…小さかった。

「な、何?!鬼太郎が…小さくなってる!!」
驚くネコ娘。目玉おやじが訳を話す。

「じつは昨日、戦った妖怪に体を幼少期に戻されてしまってのう…」

「ええーっ!?」

「その妖怪は降参させたんじゃが、この呪いだけは本人にもとけなくて、
ただ時間がたつのを待つしかないらしいのじゃ。」

「どのくらい?」

「3日ほどで元に戻るらしい。」

「3日…」

まあ、それくらいなら何も問題はないか…と、思って少し安堵するネコ娘。
その時、寝ていた鬼太郎が動き出した。

「ふあ…」

「おお、目を覚ましたか?鬼太郎。」

「お父しゃん…」

目をこすりながら、舌ったらずで話す鬼太郎。

「…おじじ…おばば…」

それぞれの顔を見て言う鬼太郎に、まるで孫を見る
祖母と祖父のように目を細める砂かけと子泣き。

鬼太郎はネコ娘を見て聞いた。

「…お姉しゃん…だぁれ?」

「えっ、私のこと、覚えてないの!?」

「記憶も幼少期に戻っているようなんじゃよ。」

目玉のおやじに言われて、しかたなく小さい鬼太郎に優しく話しかけるネコ娘。

「…私は、ネコむすめ!鬼太郎のお友達よ!!」

「ねこむしゅめ…?」

首をかしげてそう言う鬼太郎に、ネコ娘は胸がキュンとなってしまう。

「か…かわいい…っ!!」


妖怪横丁にて。

「うわー、本当に体が小さくなってる!!」
「かーわいーっ!!」

呼子やろく子達に囲まれてキョロキョロしている鬼太郎。

「おまえと鬼太郎の子供じゃねえのか?」
事情を聞かされたのにふざけてネコ娘をひやかすネズミ男。

「バカッ!!」
赤くなって怒鳴るネコ娘。もちろんそんな心当たりはまだない。

「でもよー、鬼太郎がこんな時に事件が起きたら大変だなあ。」
カワウソが不安げに言った。

「何事もなければいいのじゃが…」
目玉おやじも言った。


鬼太郎が小さくなった。それをどこからか聞きつけた妖怪がいた。

「奴を倒すなら今がチャンスだ!」


その夜、ゲゲゲハウスで寝ていた鬼太郎をそおっと
抱きあげて出て行く者がいた。

目玉おやじがその気配に気付いて目を覚ました。

「こ、こらっ!!おぬし、鬼太郎をどこへ連れて行く気じゃ!?」

その者は振り返りニッと笑った。

「悪く思うなよ、おやじ。ただ鬼太郎をあの方の所へ連れて
行くだけで銭がもらえるんでね。」

ネズミ男だ。
逃げ足の早さだけは一人前。
金のために友人も裏切る男は、こともあろうに鬼太郎を
ぬらりひょんの所へ連れていったのだ。

人気のない工場跡地。そこにぬらりひょんが、手下の朱の盆といた。

「ごくろう。」
えらそうにふんぞり返るぬらりひょん。

「ヘヘ、では約束の金を…」
まだ眠ったままの鬼太郎を朱の盆に手渡すネズミ男。

「うわー、本当に鬼太郎、小さくなってますねー!」
朱の盆が鬼太郎を見てビックリする。

「これなら、ぬらりひょん様でも簡単に鬼太郎をやっつけられますよ!」
ぬらりひょんの手下のくせに言葉が過ぎるお気楽な朱の盆に、
ちょっとイラッとするぬらりひょん。

「こんなチビになった鬼太郎をやっつけても意味がない!」
「ええ?それじゃどうするんですか?」

「そうだな…。こういうのはどうだ?鬼太郎を私の手下に育てあげるのだ。」
「へえ?それはおもしろいですねー。鬼太郎が味方になれば百人力ですもんね!」

「(…鬼太郎は3日で元にもどっちまうんだが…。ま、いいか。)
早く金をくださいよ!!」

そのネズミ男の大きな声で眠っていた鬼太郎が目を覚ます。

「ン…?ここ…どこ?おじしゃん達だれ?」

「鬼太郎、私はぬらりひょんだ。」

「お父しゃんは…?どこ?」

不安げに唯一の肉親である目玉のおやじを
探してキョロキョロ辺りを見回す鬼太郎。

「おまえの親父はこれからは私だ!
私の言う通りにすれば世界を支配することができる!!」

「おじしゃん…悪い人だね…」
泣きそうな顔で顔をしかめる鬼太郎。

「悪い人だけど、これからは味方になって一緒に
世界一の妖怪としてえらい人になれるんだよ。」

朱の盆が笑顔でそう言うが、鬼太郎は泣きだしてしまう。

「ボ、ボクを返して…!家に返してよ!!」

「ああ、泣かないで!強い子は泣かないんだよ!!ベロベロバ〜!」
あわててあやそうとする朱の盆。

「やだぁ!帰る!!悪い人、嫌い!わああああっ!!」
鬼太郎は頭から毛針を出した。

「いたたた!!」
朱の盆はたまらず手を放してしまい、鬼太郎は土の上に落ちる。

そして泣きながら、まだ毛針を放ち続けていた。

「うわあああ!鬼太郎!!オレまで刺すなよ!」
裏切り者のくせにそう言うネズミ男だが、
鬼太郎は狙って毛針を放っているわけではなさそうであった。

「うわああああああ!!」
大きな声で泣きながら、鬼太郎は電気を放ち始めた。

「ぎゃあああ!」
「小さくてもやっぱり鬼太郎は強いですね!」
「バカもん!撤収だ!!」
ぬらりひょんと朱の盆は逃げてしまった。

「ちょっ…!金は!?うわっ!!鬼太郎、もういいかげんにしろよ!
ぬらりひょんは行っちまったよ!!」

電気をカミナリのように所々に落とす鬼太郎。
それをよけながら鬼太郎を説得しようとするネズミ男だが、
鬼太郎には聞こえないらしい。

なぜか鬼太郎は髪の毛も伸ばし始めた。

「うげっ!!鬼太郎!!いいかげんにしろよ!!オレが悪かったよ!!」

そこへ、一反木綿に乗った砂かけばばぁと
子泣きじじい、目玉のおやじがかけつけた。

「鬼太郎!!」

「まずい!鬼太郎は妖力がおさえきれんのじゃ!!」
「なんじゃと!?」

「ああなった鬼太郎を止められるのは蒼だけなんじゃが…」

「すぐに呼ぶのは無理じゃ!さっき呼子が呼んだら、
また迷ってどこか遠くに行っているらしいからのう。」

「き…鬼太郎…」
ネズミ男が苦しげにしていたその時、
ネコ娘がかけつけて髪を爪で切り、ネズミ男を助けた。

「あんた、またバカなことを…!!」
「す…すまねえ…」

子泣きが鬼太郎に飛びつき、
砂かけが気を失わせることができる砂をばらまいた。

しかし、鬼太郎は妖力を爆発させるかのような
すさまじい風で砂をけちらし、子泣きすら跳ね飛ばしてしまう。

「うわあああっ!!」
逆に砂かけと子泣きが気絶してしまった。

「鬼太郎…!」
ネコ娘は思い切って鬼太郎に跳びついた。

「ネコ娘!無理じゃ!!今の鬼太郎は我を忘れておる!!」

鬼太郎の髪がネコ娘を絞めていく。
「うっ…」

「危ない!!」「ネコ娘!」
目玉のおやじとネズミ男がネコ娘を心配してあわてる。

「き…たろ…」
ネコ娘は鬼太郎を強く抱きしめた。

「(だれ…?ボクを抱きしめるのは…あたたかい…お母さん…?)」
鬼太郎は心の深い所で何かを感じていた。

「鬼太郎…っ、お願い…目を覚まして…っ!」
首に髪の毛が絞まり、苦しみ、涙を浮かべながら、ネコ娘は願った。

「ネコ娘―っ!!」
目玉のおやじとネズミ男が叫んだ。

「(…お母さん…じゃない…これは…)」
鬼太郎が深い意識の中で考えている。

もうダメかと思った時、ネコ娘は鬼太郎の唇にそっと自分の口を重ねた。
「えっ!?」

それを観た目玉のおやじとネズミ男は一瞬呆気にとられる。

次の瞬間、鬼太郎の髪の動きが止まり、元に戻っていく。
「う…き、た…ろ…?」
ケホケホとせきをするネコ娘。

「ネコ…しゃん…?」
鬼太郎がキョトンとした顔で座っていた。

「鬼太郎…」

「なんと!鬼太郎が正気に戻ったぞ!!」
驚き喜ぶ目玉おやじ。ホッとするみんな。

「ボク…悪いことしたの…?」

「ううん…もういいのよ…」

「ごめ…なしゃい…」
グズグズと泣き出す鬼太郎。

「泣かないで。鬼太郎…もう、大丈夫だから…」
優しく鬼太郎の背中をさすりながらなだめるネコ娘。

「ほら、男の子がいつまでも泣いてたら、おかしいぞ!」

そう言われると、鬼太郎は涙をぬぐって顔を上げた。
「ン…、ボク、泣かない…」
「うん!」

笑顔で返事するネコ娘に、照れたように少し顔を赤らめながら笑う鬼太郎。

砂かけと子泣きはまだ気絶していたが、一反木綿に乗せて帰らせた。

ネコ娘はネズミ男の顔をひっかいた後、
鬼太郎をおぶってゲゲゲハウスに向った。

その途中、鬼太郎がネコ娘に話しかける。

「ねえ、ネコしゃん…」
「なあに?」

「ボクが大きくなったら…お嫁しゃんになってくれる?」

「えっ!?」
驚くネコ娘。

「…ダメ?」
悲しげな顔で言う鬼太郎。

「ううん!いいよ!!私、鬼太郎のお嫁さんになる!」
こちらこそお願いします的な嬉しい言葉に興奮ぎみに答えるネコ娘。

「本当?嬉しいな、きっとだよ!」
「うん!きっと、きっとね!!」

あどけない笑顔で鬼太郎は約束した。
目玉のおやじもいたのに、ネコ娘は有頂天だった。

ハウスにもどった鬼太郎はスヤスヤと眠った。

それから数日後。
ネコ娘はおもちゃや、お菓子を持ってゲゲゲハウスに来た。

「鬼太郎!!」

「おお、ネコ娘!鬼太郎が元の姿にもどったぞ!!」
「え?」

そう、もう3日たったのだ。
鬼太郎はいつもの姿で面倒くさそうにゆっくりと起きる。

「あ…なんだ…。せっかく小さい鬼太郎が
喜びそうな物たくさん持ってきたのに…。」

ちょっと残念そうなネコ娘に、少しムッとした様子で言う鬼太郎。
「小さいままの方が良かったみたいだね?」

「えっ?ううん!そ、そんなことないよ!!
元にもどって本当に良かった!」

あわてて笑って答えるネコ娘。

「しかし、昔は蒼しか止められなかった鬼太郎の
暴走を、ネコ娘が止めるとは…驚いたのう…」

目玉おやじの言葉に鬼太郎が
「えっ?そうだったんですか!?」と驚いた様子。

「鬼太郎、この3日間、小さかった時の記憶がないの?!」

「ん…何だかよく覚えてないんだ。」

ネコ娘は心の中で舌打ちをした。
あの言葉、録音でもしておけば良かったと。

『僕が大きくなったら・・・お嫁しゃんになってくれる?』
素直でかわいらしい鬼太郎を思い出すとつい笑顔が出てしまう。

意地っ張りで無神経な今の鬼太郎には手こずる。
それでもネコ娘は鬼太郎が好きでいつまでも一緒にいるつもりだ。


その夜、ゲゲゲハウスでの鬼太郎と目玉おやじ。

「鬼太郎…」
「何ですか?父さん。」

「ワシも聞いておったぞ。」
「はい?」

「ネコ娘を嫁にするんじゃろう?」
「な、何のことですか!?ボクはそんなこと…」

「記憶にないなんて、嘘じゃろ?」
「……………」

見破られていた。さすが父さん。
完敗です。イェス!ダディ!!

覚えているなんて…照れくさくて言えなかった。
なぜか、小さくなったボクは素直すぎて困る。
今は…今も気持ちは変わらないのに、言葉にできない…
今は…ね。いつかまた…それまでもう少し…
このまま君と友達で…気兼ねなく側にいたいと思うんだ。







終わり




アニメで小さくなった鬼太郎が少し出てきたのを見て、この話を書きたくなったのでした。

そのうち松×高とかでも小さい高山くんネタやろうかな?



おまけ




残念な高山くんであった。





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