幽白蔵飛ショート小説

「飛影がかわいくなったワケ」



幽助と始めて戦った時の飛影と、仲間として再開した時の
飛影があまりにも違っていたので、その真相を蔵飛(やおい)
バージョンでお伝えしています。

BL、蔵馬×飛影のカップリングが嫌いな人は読まないで下さい。




初めて幽助と戦った時の飛影は本当に悪者という感じだった。
螢子を魔族の手下にしようとしたし、本気で幽助を殺そうとしていた。

それが、霊界から冤罪可能だからと言われたと、
自分を裏切った蔵馬と一緒に、自分を
倒した幽助の助っ人になることに協力した。

何よりその時現れた飛影の顔はまるっきり違っていた。


あれからいろいろあって、今となっては
共に戦ってきた親友だが、ふと昔のことを思い出す幽助。

ここは人間界。
幽助も蔵馬も社会人になり、働いている。
幽助は屋台のラーメン屋をやっている。
そこに蔵馬が食べに来ていた。


「なんかよお…あん時から飛影の奴、かわいくなったよな…」

幽助がそう言うと、蔵馬が笑顔で言った。

「飛影は渡しませんよ?」

「よせやい!俺には螢子がいらあっ!!」

「ですよね」


クスクス笑う蔵馬。もちろん幽助と飛影はあくまでも友達で、
飛影は蔵馬のモノである。それを幽助は知っていた。


「コエンマはもちろん、俺も彼を説得したんですよ。
捕まったままでは雪菜ちゃんを探すこともできないとかね。」

「そりゃそうだが…。だいたい飛影は蔵馬のことも
裏切り者とか言ってたし、俺のことも恨んでたんじゃねえの?」

「裏切り者はお互い様でしょって言ったんです。
俺達は盗みを働くために組んだけど、飛影が最終的に
俺を殺すつもりでいたのに気付いていましたからね。」

「そうなのか?本当にあいつワルだったな…。
だからよ、それが何で…」

「幽助が信頼できる人間であること、そして…
本当に飛影が欲しかった物を言い当てたんです。」

「飛影が本当に欲しかった物…?」

「信頼できる仲間…」


「…え?」

「彼は幼い頃から妖力の強さのあまり、孤独だった…。
育ててくれた盗賊までもが彼を恐れ、避けるように
なるほど彼は強かったから…。」

「だから、自分を裏切らない仲間を、
あの時盗んだ剣で作ろうとしたのか…?」

「そう…でもそんなの本当の仲間じゃない。
支配しても絆は生まれない。」

「…飛影にそう言ったのか?」

「ええ、でもやっぱり最初は反論されましたよ。」

「だろうな。よく説得できたな。」

「…彼は以前から根っからの悪人ではなかった…」

「え?」

「雪菜ちゃんがうらやましく思うこともある…」

「ああ…飛影は妹想いの兄ちゃんだもんな…」

「自分を捨てた氷女も、氷河の国も、結局彼は滅ぼさなかった。」

「…あれで、結構優しいとこあったんだな…」

「でも…優しさは甘さ、弱さに繋がる。強くあろうとする彼が
そこに背を向けて、悪に徹しようとしてして生きていた。だけど…」

「ん?」


「幽助みたいに、他人を思う気持ちや
怒りから強くなれることを知った。」

「ああ…そういえば、俺のそんなとこ危険だとか
言っておいて、四聖獣と戦う時はあいつもそんなことが
できるようになってたなあ…」

「現実、本当にそうなっていくのを目の当たりにして
俺もビックリしたけど、幽助が真の仲間というものが
どういうものかを飛影に教えてくれるだろうと話してはいたんだよ。」

「…それだけか?」

「え?」


淡々と話していた蔵馬をちょっと怪しむように話す幽助に、
目を大きくして冷や汗をかく蔵馬。

「まさかおめえ…その時…」

「いやっ…、あの時はまだ…っ」

「俺があの時、飛影を信用できたのも、殺気がなかったからだぜ?
口は相変わらず悪かったけどよ!」

幽助が笑いながら言う。

「てっきり俺はあん時、飛影はおめえにほだされた
んだと思ってたぜ。…手ぇ出してよ!」

「だからっ、あの時はまだそこまで俺達
信頼し合った仲じゃなかったし…っ」

さすがの蔵馬もちょっと照れてあわてている。

「本当か?しかし、初めて俺達の前で
蔵馬が戦う時によ、飛影はおまえのこと
ずいぶん誇らしげに言ってたぜ?蔵馬は強いとか、
武器の説明とか、なんかすっげー嬉しそうに話してたような…」

「そ…そうなんですか?」


それは蔵馬は気付いていなかったのでなんだか
嬉しいのと恥ずかしいので顔が赤くなってしまう。

「なんかよぉ…もうあん時すでに…あいつはおめえのこと…」

「…そ、それはないんじゃないかな…」

なぜか食べ終わったラーメンの汁を箸で
クルクル混ぜている蔵馬。

「一目おいてるってのもあるが、あいつ、
おめえの説教にはキレねえし、わりと素直だったし…」

「そ、そんなことないと思いますけどね…」

「…やっぱなんかあったろ!?」

幽助が蔵馬ににやけた顔を近づけて言った。

「な、何もありませんてばっ!!」


その時、蔵馬が座っていた後ろから
何やら殺気だった妖気が…

「!!」

「飛影!?」

「いいかげんにしろっ!おまえらっ!!黙って
聞いてれば、いつまでもくだらんことを話し続けやがって!」

「聞いてたんか?」

「いつから?」

「…っ、始めからだっ!」


顔を俯かせている飛影が赤くなっているのは二人共わかった。

「んだよ、来てんならおめえもさっさと座ればいいのによ!
ほれ、おめえにもラーメン作ってやるからさ!!」


飛影は黙って蔵馬の隣に座った。

「本人がいるなら話は早いな。で?どうなんだ?飛影?」

「…まだ言うか?」

ニヤニヤして聞いてくる幽助を睨む飛影。

「いいじゃねえか!俺はもうおめえらの仲は
知ってるんだし、今更隠すようなことでもないだろ?」

「だから、あの時はまだ俺は何もしていません!!」


蔵馬がちょっと声を大きくして言ったその後、
飛影が小さい声でボソリとつぶやいた。

「何も…?」

それにくいつく幽助。

「なんだ!?飛影!やっぱなんかあったのか!?」

「…蔵馬は…」



「え?(あの時はまだ…キスもしてないはず…)」

何か話そうとする飛影に困惑する蔵馬。

「俺の目をジッと見て…」

下を向いたまま小さい声で話す飛影。

「ふんふん」

興味津々の幽助。

「え?え?」

あせる蔵馬。

「『あなたが俺を裏切らなければ俺も裏切らない…
本当の仲間になれるはずです…』と言って…」

「そ、それで?」


身を乗り出して聞く幽助。

「(ええ?俺なんかしたっけ?)」とまだ困惑している蔵馬。

「俺の手を…両手で…包んだ…」

「………」

「…て、それだけ?」


「そうだ」

「おめえ…ウブだな…」

「?」


ウブという言葉の意味がわからなかったのか、
よく聞こえなかったのか、飛影は目を丸くしたまま
黙っていた。

なんだか肩の力が抜けた感じになった
蔵馬はため息をついた。そして思った。

飛影は初めてだったんだ。人のぬくもりを感じたのが…
そんな些細なことで、心の中の氷が解けていくように、
自分でも気付かないうちに…。

そういえばあの時、一瞬飛影は固まった。
すぐに手はふりはらわれたけど…。


俺もきっと初めて会った時から気になってはいたんだ…。
彼のことを…

『おまえの甘さは命取りになるぞ!』

クスッと笑う蔵馬。

「なんだ?」

ラーメンを食べだした
飛影が蔵馬を睨みながら言った。

「いえ、俺、あなたに何度も同じこと言われてたなあってね。」

「そういえば、『相手の性質を見極めてからじゃないと
戦法を決めないのが蔵馬の悪いクセだ』とか…」

「そのとおりだろう?おまえは何度もだまされたり、
血だらけになったりして戦ってきたじゃないか。」

「そのたんびに飛影もヒヤヒヤしてたってことだあな!」

「べっ、べつにそういうわけじゃ…」

「だーからっ、今更照れんなっつーの!
おめえらお互いずっと思い合ってたんだよ!!」

「………」


二人共赤くなってしまった。

「かーっ、かわいいな!おめえら!!」

「幽助!!」


2人して幽助に怒鳴った。

顔は赤いままで。








終わり




これも先にPIXIVにアップしてましたが、
挿絵を一枚描きおろしました。

飛影はかわいすぎる!
ツンデレデレデレv






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